第十三章 決断の瞬間

ファイナンシャルプランニングを終え、駅前でお昼を食べ終わった二人。

 カフェに入り、席につき、静止している二人の夫婦。店の大きな窓ガラスを挟み、外は騒ぎながら駅へ急ぐ子連れの家族の姿。駅前の空は様々な人々の思いが虹色に交差している。

 隆夫妻は、これまで家を買うかどうか情報だけ収集したいつもりであったが、今もう既に答えは出ている。「買う」と。来週どのような提案をもらっても答えは同じであろう。この1週間のうちに考えなくてはいけないことがたくさん見つかった。正直にいうと時間が欲しいが、のんびり考える時間がないことも分かっている。

 「どうする?」知子がいう。

 「何が?」

 「今決断できれば将来1000万単位で差が出る話を聞いて、頭では分かっているのに、なんで体がこんなに重いんだろう。」

「なんか急に追い詰められたような感じになったね。アリとキリギリスの話あったよね?このままでは老後に冬が越せないでひもじくなる感じの。」

「おばあちゃんに読んでもらった。アリのように今せっせと準備しないと大変だよという現実を突きつけられて、キリギリスのように寝っ転がってもいられない。準備というのはとても決断力のいることだった。」

「ま、家をここで買ってもいいとは思っているんだけど。腑に落ちないままで急ぎゃ良いわけではないと思う。納得して答えは出したいよね。」ーA

「ところでさ、話変わるけど、2駅先にもう一つ新築あったじゃない?行く?」

「そんな気じゃないな。そっちに行くとまた新たな迷いの種が増えていきそう。」

「それならまっすぐ帰ってまとめるか」

来週のFP相談2回目に向けて、方向性を出していこうと決めた二人だった。隆がこんなに短期間で買ってもいいと思っていることは知子には意外だった。

家に帰り、部屋を見渡す。いますぐ売って高価買取を期待できそうな資産はない。給与以外にお金を手に入れるって難しいものだ。部屋を探しても千円も見つからないだろう。急にお金が欲しくなってきた。コンスタントに3万円くらい。

「お金が増えるって難しいね。副業しようかなと思ったけど、本業に差し支えありそうだし。」隆がふと話だす。

「何急に?」

「別に。大金持ちだったら特に何も悩まなくていいね。家も車も要るか要らないか考えなくても買えばいいし。」

「まだ子供もいないし、将来どうなっているか、5年後も分からないからね。何人家族なんだろう。賑やかなのがいいな。お金よりそっちのほうが大事。」

 考えすぎて話し合いのゴールを見失いそうな二人だったが、本線に話を戻して一時間だけ話をすることにした。そこがこの夫婦のいいところだ。最後に纏めた。明日にまた迷いが生じたときのために。ーB

 知子「家は買う。決まりね。予算は4,500万以内。どれくらい余裕があるかないか、来週のFPで具体的に相談する。数字がはっきりすれば、老後の先に足りない金額もはっきりする。そして足りないお金だけ集中して貯めれば、大きな不安が取れる。家を買う前に不安を取りたいが、家を買うことをフィックスすることでその他不足が可視化され、早く手を打てるから。だから買おうという話になったことを忘れないこと。今500万前後のお金を詰めて考えても、それは人生の中では誤差の範囲。専門家が大丈夫だと言っているのであれば今はそれを信じる。子供は2人欲しい。母も言ってた。子供が出来るかわからないではなく、信じて待つ。願っても来ない人もいる。願わずに神様次第で授かろうというのは無責任と。だからはっきり2人作ると決める。そして2人育てていける3LDKにする。5畳の部屋が二つある部屋にする。角部屋は高いから中部屋でいい。2階以下は不安だから3階以上。これで部屋も悩まない。販売開始と同時に買いに行く。」

 隆「車は必要かな。子供が小さいと特に。でも家のローンが始まるまでは車は買っちゃいけないと言われたから少し我慢。家の引越し→子供→車の順が一番。子供が出来てしまうと家探しが止まり、車が先に必要になり、車のローンで家が数年買えなくなる。すると、今度子供の小学校の学区縛りでまた家が買いにくくなるる。順番も大事。だから家をここで決めようとしているのは正しいこと。」

 とても有意義な話がたったの1時間半でできた。分かっていても目を逸らしていることがたくさんあったことに気づく。家を買うことって、今起きている問題を全て解決して先に進むような儀式に思えてきた。今自分たちの判断は確信に近く「正しい」と思えるので、迷いはもうなかった。

「来週のFPさんには悪いけど、結論出ちゃったね。」

続く

考察:

Aーこのストーリーの中で、2人で「買う」と言葉に出したことがターンイングポイントとなる。腹を決めることになる瞬間。確信を持って「自分で判断する」ことが必要。場合によってはしつこい担当者に追いつめられて決断する場合もあるが、家で二人で答えを探したのはいいことだと思う。

Bー一晩寝て、なぜ昨日買いたかったのかわからなくなり堂々巡りになる性格の人もいるので、紙に書くことはおすすめ。夫婦どちらか決めきれないような性格であれば尚更この方法がいい。皆迷うので、いつでも持って読み返せるほうがいい。

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